──未来医学研究会が日中の新たな医療チャンネルを構築するきっかけを作ったのは、杉田会長からの後押しによるものと伺っておりますが、いかがでしょうか?
杉田 後押しというとおこがましいのですが、私の経済ミッションとして、敦煌に経済界の皆さんをお連れして中国と日本との文化の交流の歴史を勉強していただくという企画を毎年行っております。
たまたま株式会社エムシー代表取締役社長(未来医学研究会 副会長)の森清一さんがいらっしゃって、御自分の分野である医療からも何か日中交流に貢献できないかと声高く呼びかけられ、日中文化交流協会もそのアイディアに賛同いただき、ここまで盛り上げてこられました。
私のミッションの中で森さんが自ら発案され、素晴らしい内容でありますのでメンタルに応援している、という事です。
──杉田会長はこれまで中国との交流を推進されておられましたが、今回の医療チャンネルを拓く事への期待を教えていただけますか?
杉田 非常に大きい期待を持っております。
これから医療の分野もソフトが非常に大きい問題であり、どういう風に治療するか、どういう技術を開発するか、が大変重要です。
もちろんハードの問題もありますが、日本全体に於いていろんな面で「ものづくり」が行き詰っている、或いは海外に出て行かなければいけない、という状況の時に、日本は頭脳を使ってソフト開発において活躍していかなければいけない。今回のシンポジウムで討議されるような先端医療のアイディア・考え方は、正にソフトウェアの中心になるようなものであると考えております。
医療のソフトを使って日本・中国がWIN・WINの関係を築く、それをベースにアジア全体にその関係を伸ばしていけると思います。
日本の衰退が言われていますが、とんでもない、また新たな貢献が中国だけでなくアジア全体ひいては世界の皆様に貢献出来るに違い無い。ソフトによって日本への信頼が非常に高まってくる、そういう期待が中・長期的に大きくなっております。
──これから未来医学研究会が窓口となって切り拓く日中ですが、これを皮切りにアジア連携へとつないでいきたいと考えております。
日本がこれからの医療を先端のテクノロジーでアジアに貢献していき、廉価でこれまで治らなかった病を治すこと、より多くの人を健康にするということに貢献したいと思います。
アジア連携という視点での杉田会長のお考えの一端をお伺いできれば幸いです。
杉田 先ほど少し触れましたが、非常に大きい期待をもっております。
どちらかというと我々はこれまで、欧米に教えてもらう分野が多かった。しかし医療の分野は、日本が世界の最先端で戦っているという再生医療を含め、非常に優秀な人材が輩出しています。この能力とソフトの力を使って、中国だけでなくアジアに伝えて行くことが、日本のアジアにおけるステイタスを非常に高めて行くことになると考えます。
日経新聞では国際交流会議「アジアの未来」を18年間毎年5月に開催していますが、経済的・ものづくりの分野では衰えた部分もあるが、依然日本への期待は高いのです。
新しい分野について、アジアにおいてはやはり日本がイニシアティブをとらねばならない、医療は日本が活躍できる大きな分野だと思っています。そういう意味でこれからの皆さんの取り組みに非常に期待をしております。
──国力が衰退の一途をたどるというシュミレーションも出ている日本の将来ですが、若い人材を育てるのが大事である事はよく言われます。
どういう人材をどのように育てるのが大切とお考えでしょうか?
またそれが今回のような日中交流では、どんな育成がお考えにございますでしょうか?
杉田 こういうシンポジウムを若い皆さんも一緒になってやる事が、正に実践的な人材教育の場になります。大御所のみならず出来るだけ若い皆さんを巻き込んで、日中で大いに議論をし、共通認識を作り盛り上げる。同時に議論によって刺激されて日本も中国も若い人たちがこの分野でがんばろうという気持ちになります。
翻って、日本の衰退は世界的な話題になっており、私も全体的にはそのように思います。この機会に人材育成を小学校教育からやりなおす、日本から外の世界に関心を持って出ていけるタフなメンタルを持った子供を育てる事です。
これは学校だけでなく家庭教育も同様であって、両親が庇護してしまい子供を可愛がり過ぎて、外に出て行きたくない、家の中にじっとして居たいといった多くの子を作り上げるのではなく、もっと外に目を向ける子供・若者を育てて欲しいと考えます。
第二に自分の考えを明確に主張出来る人材育成が大事だと思います。
国際会議が成功するかどうかは、
「しゃべらない日本人をどうやってしゃべらせるか」
「しゃべり過ぎるインド人をどうやってしゃべらせないようにするか」
と言われます。
多少笑い話的ではあるが、そのように言われないようにしなければいけない。
また、外国語をもっと鍛える、まず英語を高校生までには日常的に不便無いようにし、大学では英語で専門知識を話せるようにすると共に第二外国語として中国語を積極的に学ぶ。これは医療だけでなく全ての分野に共通します。
──最後に、シンポジウムに参加の中国及び日本から出席の方々に一言お願致します。
杉田 皆さんが日中の将来だけでなく、日中を中心にしたアジアのイニシアチブを発揮しリーダー役を果たすための重要な第一歩と考えます。一回だけでなく更に次の展開を期待します。
日本の医療ソフト・技術・研究成果を中国の皆さんにどう公開していくかが非常に大きい意味を持ちます。
同時に中国が三千年の歴史で育んだ東洋医学と西洋医学との融合をやっていただきたい。正に中国と日本は隣合わせなので、一番東洋医学の経験のある中国と、西洋医学を早くから学んでアジアではトップレベルの日本と、ミックスした医療の世界が構築されることを、私個人としては非常に期待したいと思います。
──杉田様、ありがとうございました。