学内医師、基礎研究者が本研究所に集い、理工薬学系研究者・企業研究者とも一体となって細胞シート技術を基盤とした革新的再生医療の実現に向けた研究開発を進めています。
形成外科との共同研究で、温度応答性培養皿を用いて作成した表皮細胞シートを、ラット皮膚欠損モデルへ移植し、良好な治療効果を示しました。現在、この細胞シート技術と組織灌流培養装置(バイオリアクター)を用いて、生体外で皮膚組織再生(皮弁作成)を目指しています。これらの技術を臨床応用すべく研究を進めています。
妊娠のプロセスにおける子宮内膜の変化に関しては未知の部分が多く、その構造と機能の経時的な把握は生殖医療にとって重要な課題となっています。産婦人科と共同で子宮内膜にフォーカスした研究を展開し、機能的な子宮内膜様組織の再生を試みています。生体外における子宮内膜への受精卵の着床のメカニズムを解明する研究や不妊治療など生殖医療における新たな 治療法 の開発を進めています。
潰瘍性大腸炎・クローン病等の炎症性腸疾患は、特定難病疾患でありわが国でも年々罹患者数が増加しています。薬物療法が主体ですが、再燃緩解を繰り返し、治療が難渋する例も散見されます。新たな 治療法 の確立のため、消化器内科と共同で間葉系幹細胞シートを利用した、炎症粘膜に対する新規 治療法 の開発を進めています。
糖尿病は、インスリン分泌不全およびインスリン抵抗性により、全身の様々な合併症を来す疾患です。糖尿病代謝内科との共同で、ヒトiPS細胞由来膵島細胞を用いた糖尿病の根治的治療法の開発や、間葉系幹細胞シート移植による皮膚潰瘍治療および糖尿病性腎症への新規治療法の開発も進めています。
末期腎不全による透析治療患者は31万人を超えており、慢性腎不全により徐々に低下する腎機能を直接保持、改善する治療法は未だにありません。そこで、腎臓内科と共同で腎臓の表面に治療有効性のあるサイトカイン分泌細胞シートを移植し、その治療効果について評価を行っています。現在、細胞シート移植後の腎不全モデルの腎繊維化抑制効果を確認し、臨床応用に向けた研究を続けています。
心臓血管外科と共同で革新的心筋再生治療の創出を目指し研究を行っています。これまでに、ヒトiPS誘導心筋細胞シートをラット血管へ巻き付けることにより脈圧を発生できる管状心筋組織の構築に成功しています。今後は、血管網付与技術を使い厚い心筋組織を構築することで、生体内で不全心の補助となりうる強い拍動を生み出す高機能心筋組織を創製することを目指します。
脳神経外科の血管障害班と、脳血管障害への新規治療開発に関する共同研究を行っています。これまでに、ラット脳梗塞モデルに対して他家間葉系幹細胞シートを移植し、虚血脳における血管新生と神経再生が誘導されることを示すとともに、行動障害の改善につながる事を報告しました。現在、脳梗塞や血管性認知症に対する臨床応用を目指して研究を進めています。