お知らせ

2016年08月26日 インテル社長らが先端工学外科学分野(FATS)へ

8月5日(金)、Intel米国本社より、副社長Gregory R. Pearson氏、Caitlin B.Anderson氏、インテル日本法人より社長 江田麻季子氏、清水由香氏が、本学先端生命医科学研究所(TWIns)先端工学外科学分野(FATS)に来訪されました。本学からは村垣善浩教授、正宗賢教授、吉光喜太郎特任助教、堀瀬友貴特任助教が出迎え、FATSとIntelが行っている共同プロジェクトの視察、ならびにスマート治療室の見学を行い、意見交換を行いました。

現在FATSではIntelと女子医大を拠点とした「次世代医療
ソリューション研究開発プロジェクト」
を共同で実施しており、医療とくに手術を支援するシステムをIntelの有する最新のテクノロジーを用いて開発しています。

FATSでは2000年来医工融合を積極的に推し進めており、その特徴とも言えるスピードを活かした研究開発を行っており、Greg氏や江田社長は組織的研究開発能力と脳腫瘍手術に関連した成果そして、スマート治療室のコンセプトに大いに感銘を受けていました。

 

2016年08月19日 成熟した神経回路を維持する仕組みを解明 ~自閉症の病態解明に期待~

 Point 

 代謝型グルタミン酸受容体1型(mGluR1)が成熟した神経回路
の維持に必須であることを証明しました。
 マウス視覚系を用いて以下を明らかにしました。
 1. 視覚をつかさどる脳の領域(視覚視床)では、mGluR1の発現が神経回路の成熟後に増加すること 
 2. 成熟後の視覚視床でmGluR1を失活させると、網膜由来のシナプスが子供のように未熟な状態に
   退行すること 
 3. 視覚情報の遮断中にmGluR1を活性化させると、網膜由来のシナプスの退行を防げること  

 ○ 自閉症などの発達障害病では神経回路が安定的に維持されないことが報告されています。
  今回の成果は自 閉症の脳機能障害の病態理解や治療法の開発につながることが期待されます。
 
 
本研究は、東京女子医科大学 医学部 生理学(第一)講座の鳴島(行本)円准講師、宮田麻理子教授・講座主任、東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻 生理学講座 神経生理学分野 狩野方伸教授らの研究グループによって行われました。また、本研究の遂行にあたり、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)による支援を受けました。 

Ⅰ 研究の背景と経緯

「三つ子の魂百まで」といわれるように、脳は個々の経験や生育環境に応じて発達し、成熟した神経回路が固定され、さらに維持されることで、子供のころに獲得した性質が大人になっても残ると考えられています。脳の神経 細胞レベルの研究からも、子供の脳では発達初期に過剰な神経回路が形成され、その後、生育環境によって必要な ものは残り、不必要なものは刈り込まれて精密な神経回路へ成熟することが知られています。一方、いったん成熟 した神経回路は柔軟性に乏しく容易に変化しないものと考えられていましたが、ごく最近になって、一度成熟した 神経回路がその後も正しく維持されるためには、生育環境からの持続的な経験が必要であることが少しずつ明らかになってきました。たとえば、視覚をつかさどる神経回路がいったん成熟した後、視覚情報を遮断すると、成熟した回路を維持することができなくなり、完成した神経回路が退縮し、余分な神経回路が作られて正確さが失われ、まるで子供の未熟な神経回路のように変化することが知られています(退行、図1、2)。
 このような退行現象は、発達障害疾患の一種であるレット症候群注1)のモデルマウスで報告されており、レット 症候群に特徴的な病態である、発達の初期に正常に獲得された脳の機能が成長してから失われていくこととよく合 致しています。また、自閉症においては、神経同士の情報を受け渡す場所であるシナプスが安定的に維持されないことが報告されており、正常な回路の維持はこれらの疾患にも深く関連があることが示唆されていました。
 しかし、どのような仕組みで生育環境によって神経回路が維持されているのかは謎につつまれていました。 





Ⅱ 研究の内容

 本研究グループは視覚をつかさどる脳の領域(視覚視床、図1)で、生育環境から受ける刺激によって成熟した神経回路が維持される仕組みを解明しました。
 今回の研究では、代謝型グルタミン酸受容体1型(mGluR1)というたんぱく質に着目しました。mGluR1は神経伝達物質のひとつであるグルタミン酸により活性化される分子で、細胞の外からの情報を細胞の内部に伝える役割を持ち、大人の視覚視床で特に多く発現しています。大人になったマウスが開眼し眼からの光刺激を受けてから、視覚視床のmGluR1が急激に増加することを発見しました。そこで、視覚視床の神経細胞から電気的な活動を記 録するパッチクランプ法と、電子顕微鏡を用いた神経回路の微小な構造の観察によって、神経回路の性質を詳しく 解析しました。
 ウィルスの細胞への感染力を利用して、視覚視床で神経回路の成熟後にmGluR1を失くす操作(RNA干渉法によるmGluR1遺伝子のノックダウン)注2)を行うと、暗闇で飼育したときと同様に、完成した正常な神経回路を 維持する仕組みが破たんしてしまいました。正常な神経回路は退縮し、余計な神経回路が異常に形成され、開眼前の子供のころのように退行してしまいました(図2)。


 逆に、暗闇での飼育中に薬剤によりmGluR1を活性化させると、視覚情報の遮断によって起こる異常な神経回路の形成を防ぎ、正常な神経回路を維持することに成功しました。
 このように、mGluR1を失くしたときに正常な神経回路を維持する仕組みが破たんするだけでなく、たとえ生育環境を変化させても、mGluR1を活性化することにより、神経回路の退行現象を防ぐことができるとわかりま した(図3)。つまり、mGluR1は成熟後に生育環境によって神経回路を維持する仕組みに必要不可欠なたんぱく質であることを証明することができました。
 これまで、いったん成熟し完成した神経回路は変化することが少ないと考えられていたため、生育環境によって正常な神経回路が維持される仕組みについて報告した研究は、まだほとんどありません。しかし、近年の研究技術 の進歩と精神疾患が起こる仕組みを明らかにする研究成果から、脳で正常に完成された神経回路を積極的に維持したり、変化させたりする仕組みの存在が認知され、幅広い研究が行われるようになってきました。本研究成果はそ のさきがけとなるものです。
  一方、レット症候群の原因となるたんぱく質としてMeCP2 注3)が知られています。しかしながらMeCP2は、 それ自体が非常に幅広い機能を持つため、神経回路を維持する仕組みに絞って研究を進めることが難しい状況でし た。本研究では、mGluR1が神経回路の成熟後に増加する視覚視床に着目し、成熟後の時期や脳の特定の領域に 絞って、mGluR1を操作する手法を用いたことで、神経回路の維持の仕組みにmGluR1が必要不可欠であること 証明することができました。 



Ⅲ 今後の展開


 視覚をつかさどる脳の領域の神経回路が幼児期の視覚経験によって柔軟に変化する(可塑性をもつ)ことは、動物を用いた研究で明らかになり、その後ヒトでも証明され、近年ではヒトの幼児に対する眼帯の使用が避けられることにつながるなど、視覚回路の発達の研究は眼科、脳神経領域に大きな貢献をもたらしました。ごく最近では、 大人になっても眼帯などで長期に視覚刺激を遮断すると、その後視力が低下する(弱視)ことも報告され、視覚の可 塑性は決して幼児期だけではなく大人にも存在することもわかりつつあります。
 しかし、どのような仕組みでこのような可塑的変化がおきるのかはよくわかっていませんでした。本研究で明らかにした、視覚経験による神経回路 の維持の仕組みはこのようなヒトの視力障害の基盤となる可能性があります。
 また、レット症候群など発達障害のモデル動物の研究から、mGluR1を失くしたときと同様に、いったん成熟 した正常な視覚神経回路が維持期をさかいに退行していくことが報告されていることから、レット症候群の原因たんぱく質であるMeCP2がmGluR1に何らかの影響を与えている可能性があります。今後、MeCP2とmGluR1 の関係を明らかにすることで、レット症候群の特徴的な症状の原因のひとつである、神経回路の退行現象を解明したいと考えています。
  さらに、mGluR1と同じ仲間であるmGluR5は大脳皮質に広く存在しており、自閉症に関与しているといわれていますが、神経回路の維持への役割はまだ十分にわかっていません。今後は、このような類似した分子が神経回 路の維持に果たす普遍的な役割を明らかにし、脳の機能にとってどのような意義を持つかを解明することで、精神疾患や脳機能障害の病態理解につなげたいと考えています。   
 

2016年08月01日 八千代医療センター 新棟OPEN!

このたび、東京女子医科大学附属八千代医療センターの第2病棟が竣工いたしました。
第2病棟は地上5階建で、棟内には救命救急センター(ICU)、脳卒中ケアユニット(SCU)、がん病棟を設け、さらに、屋上にはヘリポートを設置し、救急救命だけでなく、大規模災害にも対応できるように、地域のニーズに応えるべく設備の充実をはかりました。

    

第2病棟は8月1日に開床しました。144床が増床となり、八千代医療センターの全病床数は501床となりました。今後は、これまで以上に地域の期待を担うべく、医療の充実を図り、東京女子医科大学の附属医療施設として、安全で質の高い医療を目指して参ります。

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