お知らせ
2019年08月02日 【研究成果プレスリリース】脳卒中再発予防の血圧管理目標が 130/80mmHg未満である事のエビデンス確立
Press Release
令和元年8月2日
学校法人 東京女子医科大学
脳卒中再発予防の血圧管理目標が
130/80mmHg未満である事のエビデンス確立
Ⅰ 研究の背景と経緯
脳卒中再発予防に血圧管理が重要であることは広く知られてきたが、どこまで血圧を下げるべきかについ
ては、確固たるエビデンスがなかった。従来140/90mmHg未満を目標に降圧管理が行われてきたが、よ
り厳格な血圧管理が脳卒中再発予防に有効かどうか不明であった。
Ⅱ 研究の内容
RESPECT Study試験は、Recurrent Stroke Prevention Clinical Outcome Studyの略で、我が国の脳卒
中既往患者を対象として通常血圧管理群(140/90mmHg未満)と厳格血圧管理(120/80mmHg未満)
模試験である。本試験は、新小山市民病院院長の島田和幸院長(研究開始当時は自治医科大学循環器内科
教授)を主任研究者として、全国140施設が参加して実施され、その研究成果が2019年7月29日に東京女
子医科大学脳神経内科学北川一夫を筆頭責任著者としてJAMA Neurologyにオンライン掲載された。当初
の目標症例数は5,000例、脳卒中イベント244件を目標に研究がスタートしたが、当初の脳卒中再発率が
予想より多かったため最終的に目標症例数2,000例として研究が実施された。2016年夏に中間解析を実施
し、2016年12月末に1,280例が登録、ランダム化された時点で、月別の登録症例数の激減、研究資金枯渇
に伴い研究終了となった。しかし、最終的に1,263例が解析対象となり、平均3.9年の追跡期間で91件の再
発脳卒中が観察された。登録1年後の両群の血圧は通常管理群132.0/77.5mmHg、厳格管理群
123.7/72.8mmHgであり有意な群間差を認めた(図1)。脳卒中再発率は通常管理群は年間2.26%、
厳格管理群は1.65%であり厳格管理群で低下傾向を示した(HR 0.73;95%CI 0.49-1.11、p=0.145)
(図2)。特に脳出血発症率は通常管理群0.46%、厳格管理群0.04%と顕著な差を認めた。本研究結果を
過去に脳卒中既往患者を対象として厳格血圧管理と通常血圧管理を比較してSPS3研究を含む3つのRCT研究
とメタ解析したところ、厳格な血圧管理は通常血圧管理に比し22%有意に脳卒中再発予防を抑制することが
明らかになった(図3)。
Ⅲ 今後の展開
RRESPECT Study試験単独では厳格血圧管理の優位性を示されなかったが、過去の同様な研究とメタ解析
することにより、初めて130/80mmHg未満に血圧管理することが脳卒中再発予防に有用であることが示さ
れた。本研究成果で得られたエビデンスから今後脳卒中再発予防の血圧管理は130/80mmHg未満を目標と
することが広く周知されるものと期待される。
図1:RESPECT Study試験における通常血圧群、厳格血圧群の収縮期血圧の推移
収縮期血圧(mmHg)
0 1 2 3 4 5
割り付けからの期間(年)
図2:RESPECT Study試験における通常血圧群、厳格血圧群の脳卒中再発率
図3:脳卒中再発予防における厳格血圧管理と通常血圧管理を比較したRESPEC Study試験を
含む臨床研究のメタ解析
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
北川 一夫(キタガワ カズオ)
東京女子医科大学 医学部 脳神経内科学講座 教授・講座主任
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111
E-mail: kitagawa.kazuo”AT”twmu.ac.jp
<報道担当>
東京女子医科大学 広報室
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111 Fax:03-5269-7326
E-mail: kouhou.bm”AT”twmu.ac.jp
130/80mmHg未満である事のエビデンス確立
Point
脳卒中既往患者における血圧管理は130/80mmHgが適切であることを証明しました。本研究成果
はJAMA Neurologyに令和元年7月29日にオンライン掲載されました。 1. わが国の脳卒中既往患者を対象として、通常血圧管理(140/90mmHg未満)と厳格血圧管理 (120/80mmHg未満)に割り付け、脳卒中再発予防を比較したところ、厳格血圧管理で有意ではな いものの27%再発が低下する傾向が示された 2. 本試験を過去の同様な試験とメタ解析したところ、厳格血圧管理(少なくとも130/80mmHg未満) は通常血圧管理に比較して22%有意に脳卒中再発を抑制することが明らかになった。 3. 本研究の成果から、脳卒中再発予防の目標血圧は130/80mmHg未満が適切であることが初めて 明らかになった。 |
Ⅰ 研究の背景と経緯
脳卒中再発予防に血圧管理が重要であることは広く知られてきたが、どこまで血圧を下げるべきかについ
ては、確固たるエビデンスがなかった。従来140/90mmHg未満を目標に降圧管理が行われてきたが、よ
り厳格な血圧管理が脳卒中再発予防に有効かどうか不明であった。
Ⅱ 研究の内容
RESPECT Study試験は、Recurrent Stroke Prevention Clinical Outcome Studyの略で、我が国の脳卒
中既往患者を対象として通常血圧管理群(140/90mmHg未満)と厳格血圧管理(120/80mmHg未満)
模試験である。本試験は、新小山市民病院院長の島田和幸院長(研究開始当時は自治医科大学循環器内科
教授)を主任研究者として、全国140施設が参加して実施され、その研究成果が2019年7月29日に東京女
子医科大学脳神経内科学北川一夫を筆頭責任著者としてJAMA Neurologyにオンライン掲載された。当初
の目標症例数は5,000例、脳卒中イベント244件を目標に研究がスタートしたが、当初の脳卒中再発率が
予想より多かったため最終的に目標症例数2,000例として研究が実施された。2016年夏に中間解析を実施
し、2016年12月末に1,280例が登録、ランダム化された時点で、月別の登録症例数の激減、研究資金枯渇
に伴い研究終了となった。しかし、最終的に1,263例が解析対象となり、平均3.9年の追跡期間で91件の再
発脳卒中が観察された。登録1年後の両群の血圧は通常管理群132.0/77.5mmHg、厳格管理群
123.7/72.8mmHgであり有意な群間差を認めた(図1)。脳卒中再発率は通常管理群は年間2.26%、
厳格管理群は1.65%であり厳格管理群で低下傾向を示した(HR 0.73;95%CI 0.49-1.11、p=0.145)
(図2)。特に脳出血発症率は通常管理群0.46%、厳格管理群0.04%と顕著な差を認めた。本研究結果を
過去に脳卒中既往患者を対象として厳格血圧管理と通常血圧管理を比較してSPS3研究を含む3つのRCT研究
とメタ解析したところ、厳格な血圧管理は通常血圧管理に比し22%有意に脳卒中再発予防を抑制することが
明らかになった(図3)。
Ⅲ 今後の展開
RRESPECT Study試験単独では厳格血圧管理の優位性を示されなかったが、過去の同様な研究とメタ解析
することにより、初めて130/80mmHg未満に血圧管理することが脳卒中再発予防に有用であることが示さ
れた。本研究成果で得られたエビデンスから今後脳卒中再発予防の血圧管理は130/80mmHg未満を目標と
することが広く周知されるものと期待される。
図1:RESPECT Study試験における通常血圧群、厳格血圧群の収縮期血圧の推移
収縮期血圧(mmHg)
0 1 2 3 4 5
割り付けからの期間(年)
図2:RESPECT Study試験における通常血圧群、厳格血圧群の脳卒中再発率
図3:脳卒中再発予防における厳格血圧管理と通常血圧管理を比較したRESPEC Study試験を
含む臨床研究のメタ解析
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
北川 一夫(キタガワ カズオ)
東京女子医科大学 医学部 脳神経内科学講座 教授・講座主任
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111
E-mail: kitagawa.kazuo”AT”twmu.ac.jp
<報道担当>
東京女子医科大学 広報室
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111 Fax:03-5269-7326
E-mail: kouhou.bm”AT”twmu.ac.jp
※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。
【プレス情報】
1.掲載誌名 JAMA Neurology
2.論文タイトル Effect of Standard vs Intensive Blood Pressure Control on the Risk of Recurrent Stroke: A Randomized Clinical Trial and Meta-analysis
3)論文のオンライン掲載日
2019年7月29日
PDFはこちら>>
1.掲載誌名 JAMA Neurology
2.論文タイトル Effect of Standard vs Intensive Blood Pressure Control on the Risk of Recurrent Stroke: A Randomized Clinical Trial and Meta-analysis
3)論文のオンライン掲載日
2019年7月29日
PDFはこちら>>