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PET検査の注意すべき点

■複合検査の重要性と多目的診断の必要性

 PETは「がん」の診療にとって画期的な検査法といえますが、これさえ受ければ完璧というわけではありません。他の検査や画像診断とあわせて初めて、存在部位や広がり、重症度がより明確になります。
 また、臓器や部位によっては、PETだけでは見つけることができない「がん」があることも、理解しておかなくてはなりません。
 当院はこのようなPETの特徴をふまえ、複合検査の重要性と多目的診断の必要性に注視し、つねに高精度の診断に結び付くよう、工夫と努力をしております。
複合検査の重要性と多目的診断の必要性
■FDG PET検査における偽陰性と偽陽性
 PET検査におけるFDGの取り込みには、細胞密度と細胞分裂速度、組織の活動程度、腫瘍の大きさ、などが影響します。この結果、PET検査での偽陰性(悪性腫瘍を、正常ないし良性疾患と判断してしまう)あるいは偽陽性(正常ないし良性疾患を、悪性腫瘍と判断してしまう)が発生します。参考までに下記に幾つかの偽陰性と偽陽性の症例を紹介します。
【PET偽陰性になりやすい場合】
・腫瘍径が1cm以下
・細胞内にFDGを留まりにくくする酵素の存在(原発性肝癌 )
・高血糖状態(糖尿病)
・細胞成分が少ない腫瘍(胃印環細胞癌・卵巣粘液のう胞腺癌等)
・尿路に接している場合(腎癌・膀胱癌・前立腺癌)
・悪性度の低い腫瘍(肺高分化腺癌・卵巣境界悪性腫瘍等)
原発性肝癌 膵粘液のう胞腺癌 腎盂癌 肺高分化腺癌
造影CT(上図)では肝右葉に動脈相でリング状に造影される腫瘤を認めるが、ほぼ同じ部位のPET/CT(下図)では異常集積を認めない。 膵頭部にのう胞を認め、のう胞の壁は弱いFDGの集積を認める。肝右葉には軽度のFDG集積を伴う転移巣を認める。 CTでは左腎盂に腫瘤を認める。ほぼ同一断面のPET/CTでは腫瘤の位置に一致してFDGの高集積を認めるが、正常でも認められる尿による腎盂内の高集積と区別することは不可能である。 左肺上葉にすりガラス状の淡い陰影を認める。この部位にはFDGの集積は認められない。
【PET 偽陽性になりやすい場合】
・急性炎症
・慢性炎症 ・膿瘍 ・結核 ・サルコイドーシス
・慢性甲状腺炎 ・唾液腺腫瘍 ・良性骨腫瘍
・腸管蠕動亢進 ・腸炎 ・人工肛門部位 ・大腸ポリープ
・月経時子宮内膜 ・排卵期卵巣 ・授乳中乳線
・子宮筋腫 ・子宮内膜症
・良性卵巣腫瘍(チョコレートのう腫・奇形腫)
・褐色脂肪(寒冷期)
耳下腺良性腫瘍 正常卵巣 子宮筋腫 褐色細胞
ワルチン腫瘍。右耳下腺内にCTで認められる腫瘤に一致して、PET/CTでは高度の異常集積を認める。集積程度だけでは、耳下腺癌と区別できない。 健常女性排卵期に認められる卵巣の生理的集積 膀胱を上から圧排する、大きな子宮筋腫をCT上で認める。筋腫全体に一致して、内部に一部高い集積部位を伴うFDGの軽度異常集積を認める。 両肩から脊柱の両脇に認められる集積は、寒冷期に比較的若い女性によく見られる褐色脂肪の所見である。褐色脂肪は熱産生に関与しているとされている。