世界の産業は、効率化、省力化とともに、大型のシステム、大量生産の時代を経て、画一が多様へ、マクロからミクロヘ、構造から機能へと徐々にその対象を移行させてきています。これらを可能にした最先端テクノロジーを産業分野のみならず医療分野に積極的に応用することにより、これまで以上に高度な医療技術の確立が可能になると期待されています。すなわち、21世紀に突入した現在、医療分野において予防・診断・治療に超微小システム、画像、情報技術、バイオマテリアルなどの最先端テクノロジーを導入し、高度な医学、医療を達成することが極めて重要な課題となっています。
近年、生命科学・医工学という新領域の進展が、米国を中心に諸外国の取り組みによって促進され、日本においても先端医療の開拓と同時に新たな学問領域としての確立が大いに期待されています。教育は国の最重要課題であり、わが国においても21世紀の科学技術立国を目指し、従来にない教育、研究を導入した新体制が強く望まれています。医学・生命科学と理工学の先端テクノロジーとの真の融合によって、新しい治療・診断システムの概念を作り出すことのできる独創性豊かな人材の育成が可能となり、既存の領域にとらわれることなく、集学的なアプローチによって新分野にチャレンジし、新しい概念やシステムの構築を行うことのできる研究者の養成を強力に推進します。
両大学大学院の連携の特徴は、理工学と医学のシーズとニーズの出会う場を作り、新しい医療テクノロジーを大きく飛躍させるとともに、高度な医療を達成しうる環境作りを行うことにあります。これによって画像診断、画像鏡視下の手術、遺伝子診断・治療、人工臓器、バイオマテリアル、移植、バイオ人工臓器、再生医工学治療など先端医療を集約的アプローチによって達成する体制を作ります。大量生産、大型システムを実現した理工学の主体となる概念に対し、生命体との対応を考慮することは、従来の概念の延長ではもはや説明がつかず、新概念に基づく新学問の構築が急務であります。このような立場から本連携システムでは、生命医工学系新学問領域を追究したいと考えています。
今回の東京女子医科大学と早稲田大学の連携の特徴は、共通の先端生命医科学を研究する立場で連携するという点で世界に先駆けて教育、研究の新体制を目指すことにあります。相互の垣根を取り払い、新たな学問領域を作り出し、ここから新しい概念や技術を創出させ、さらにはこの分野を発展させていく研究者や教育者を生み出すことが連携の特徴です。
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