腎臓小児科
概要
腎臓小児科は、1978(昭和53)年1月に、伊藤克己(いとうかつみ)名誉教授が東京女子医科大学人工腎臓センター(腎臓病総合医療センターの前身)に着任し、小児腎臓病診療を開始したことに始まります。1979(昭和54)年4月に、東京女子医科大学病院の3番目の臓器別センターとして腎臓病総合医療センターが設立され、同時に腎臓小児科が独立した診療科としてスタートしました。1983(昭和58)年5月に、伊藤克己先生が腎臓小児科の初代教授に就任し、小児腎臓病診療における多大な功績を挙げて2004(平成16)年3月に定年退職しました。同年4月に服部元史(はっとりもとし)先生が腎臓小児科診療部長に就任、2005(平成17)年11月に二代目の教授に就任し、難治性ネフローゼ症候群や小児腎不全診療を中心に小児腎臓病領域において多大な業績を挙げました。2018(平成30)年6月から日本小児腎臓病学会理事長を2年間務めたほか、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本臨床腎移植学会、日本アフェレシス学会など成人診療科を中心とする学会においても理事や評議員などを歴任しました。小児領域の必要性・重要性の啓発に貢献し、多くのガイドライン作成や厚生労働省班研究における資材開発などの成果を挙げ、2024(令和6)年3月に定年退職しました。同年5月に三浦健一郎(みうらけんいちろう)が三代目の教授に就任し、現在に至ります。
教育内容
1)学生教育
当科は腎臓病総合医療センターおよび小児総合医療センターの構成診療科として、医学部学生、看護学部学生及び大学院生の教育に携わっています。臨床実習後半の選択実習では診療問題解決型臨床実習のもとスチューデントドクターとして実習することを目指しています。
2)卒後教育
初期臨床研修医の小児科研修を担当しています。また後期臨床研修では小児科専門医研修プログラムのもと小児総合医療センターとしてプライマリケア、地域医療、救急から専門領域の高度医療の実践と研究・教育を行っています。また、小児腎臓病専門医を目指す若手医師を国内留学生として広く受入れ、多彩な症例に基づいた専門医教育を実践しています。
研究内容
1)小児慢性腎不全の治療研究(腎移植・透析療法)
ABO血液型不適合生体腎移植、特別な配慮を要する腎移植(巣状分節性糸球体硬化症、多発性嚢胞腎、下部尿路異常合併例など)、献腎移植、腹膜透析における被嚢性腹膜硬化症の研究などを行っています。
2)ネフローゼ症候群・巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の病態解明・治療開発
病因としての抗ネフリン抗体の解析、次世代シーケンサーを用いたFSGSの遺伝子解析をベースとして、腎移植後再発の予防・治療も含めた新たな治療戦略の確立を目指しています。
3)IgA腎症をはじめとする腎炎の治療研究
詳細な腎生検診断に基づき、患者さんに適した治療と研究を行っています。
4)小児腎疾患に対するアフェレシス治療の研究
重症腎炎や難治性ネフローゼ症候群(FSGSを含む)、ABO血液型不適合生体腎移植などを対象として、必要に応じて血漿交換やLDL吸着療法などを行っています。
5)小児腎領域の希少・難治性疾患(エプスタイン症候群、ロウ症候群などの尿細管機能異常症)の調査研究
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業小児腎領域の希少・難治性疾患群の全国診療・研究体制の構築
エプスタイン症候群の遺伝子解析・免疫染色による診断、腎病理、治療の研究、ロウ症候群の診断、疫学調査、長期予後の研究などを行っています。